広大な干潟が続く有明海。11月下旬、この有明海にあたり一面海苔畑が広がります。全国各地で海苔の養殖が行われていますが、佐賀県は品質、生産量共に、国内トップクラスを誇っています。
その秘密は、有明海独特の特長にあります。
満潮時には海に浸かっている海苔網が、干潮時になると海面から顔を出し、海苔は太陽の光をいっぱいに浴びます。海苔は植物ですから、太陽の光を浴びて光合成を行うことでたくさんの栄養を蓄えることができるのです。そしてまた満潮になると海に浸かります。
有明海につながる数多くの大きな河川が、栄養分豊かな水と土砂を有明海に運んできてくれます。
そして川の真水と海水が混ざり合い、海苔が最も柔らかく、美味しく育つ塩分濃度になっています。
海苔の元になる「糸状体」はカキ殻の中にもぐり、春から夏にかけて海水の中で成長していきます。
牡蠣殻の中で成長した糸状体は海苔の種となる核胞子を作ります。この核胞子がたくさんついた牡蠣殻を落下傘と呼ばれる袋に入れ、海苔網に吊るします。水温が23度くらいになると、核胞子は牡蠣殻から一斉に飛び出し、網一面に付着して、海苔の芽となります。
核胞子の付き具合を確認しながら、重ねた海苔網の数を二十日ほどかけて1枚張りにしていきます。こうして初秋の有明海にはあたり一面海苔畑のような風景が広がります。網に核胞子を付着させてから30日ほどたった11月下旬から最初の海苔摘みが始まります。
1回の海苔摘みで、1枚の網から海苔は約300~600枚分とれます。海苔摘みは1枚の網で7~8回行います。
こうして摘み取られた海苔は横19cm、縦21cmの長方形に型取りされ、乾し海苔になります。乾し海苔はまず専門の検査員によって厳しくチェックされ、規格・品質によって170以上(173)に細かく分類されます。
これらの海苔はすべて入札が行われます。海苔の出来によって値段が大きく変わるため、生産者、海苔業者共に緊張の糸が張り詰めます。香り、色、光沢、すき方、乾燥具合、破れや縮みの有無などを見ながら、最も高い値を付けたところに落札されます。
こうして落札された海苔は火入れ工場へと運ばれ、同じ味わいを保つために火入れを行います。およそ3時間かけて通常9~10%の水分を5%未満にまで乾燥させます。火入した海苔はサン海苔工場へと運ばれ、様々な海苔商品に加工されます。